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ジャンジャコモ・グェルフィはルッフォの弟子だったのか

ggport01.jpg 2012年2月に亡くなったイタリア人バリトン、ジャンジャコモ・グェルフィ。
 第一次・第三次イタリア歌劇団として来日し、「アイーダ」「アンドレア・シェニエ」「トスカ」等に出演し、映像も残っていますので、日本での知名度も高いのではないかと思います。

 このグェルフィがティッタ・ルッフォの弟子だった…という説があるらしい。

「えっ!? ルッフォに弟子はいないはず。誰がそんなテキトーなことをっεε=ヽ( `Д´)ノ 」なんてプチキレたりもしたのですが…Wikipediaの英語版にちゃんと書いてあるのだそうです。 ⇒⇒⇒Giangiacomo Guelfi Wikipedia
from Wikipedia
Born in Rome, Guelfi studied law before turning to vocal studies in Florence with baritone Titta Ruffo.
(ローマに生まれたグェルフィは法律を学び、後に転身。フィレンツェにてバリトン歌手のティッタ・ルッフォのもと声楽を学んだ)

 本来なら「誰かが誰かの弟子」などという情報は、師弟どちらの歌手についても理解や親近感を深めることができるので、大歓迎なのですが、ルッフォに限っては〝弟子〟を名乗られるのはちょっとイヤ。

 というのも、正統な音楽教育をほとんど受けずに歌手となったルッフォが、それ故に弟子を取ろうとはしなかったというのは、ルッフォのファンの間ではけっこう有名な話でして、自伝に追記された長男、ルッフォ・ティッタ・ジュニア氏によるエピローグにも明記されているからなのです。

I never knew how to sing, that is why my voice went by the time I was fifty. I have no right to capitalise on my former name and reputation and try to teach youngsters something I never knew how to do myself.
(私は歌い方というものを知りません。それが50才を前に声を失った理由です。過去の名声や評判を利用して、自分でもわかっていなかった事を若い人たちに教えるなんてことはできないのです)

 師弟関係はもちろんのこと、マスター・クラス等々を開講することも無かったそうです。

 ですので、ルッフォのファンの立場としては、グェルフィが弟子というのは違うんじゃないかなぁ……と……。

 グェルフィ側も、ざっとネットで検索する限りでは、そう名言しているのは英語のページだけのような気がする。どれも同じ文章だし。コピペが容易なネット上では、憶測がいつのまにやら事実として拡散するのはよくある事です。
(とはいえ、私もソースはルッフォの自伝だけで、グェルフィ側の資料を漁ったわけではありませんので、100%の自信は無いです)

 それにしても、なぜグェルフィ弟子説が存在するのか。
 ヒントを求めて再度自伝を読み返してみたところ、興味深い箇所がありましたのでご紹介します。

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直筆サイン画像 1911.7月 ブエノスアイレス

trcard01m.jpg ティッタ・ルッフォの直筆サインはネットを探すとけっこうな数が出てきます。その中でもこれは、あれこれ想像を膨らませることができて面白い。

 ブエノスアイレスのバランカス・ベルグラーノ公園のポストカードなのですが、下の余白にJulio 1911(1911年7月)と書いてあります。

 ルッフォの筆跡とは違うので、おそらくはサインを貰った人が記念に記入したものでしょう。

 当時34才のルッフォは、ブエノスアイレスで何をしていたのでしょうか?

 自伝の年表を開いてみますと……ルッフォは1911年5月から8月中旬までの間、ブエノスアイレスのコロン劇場に出演していました。

 7月は《ドン・カルロ》5回と《西部の娘》4回。ロドリーゴとジャック・ランス、それぞれ初役だったようです。

 想像ですが、このポストカードの主はブエノスアイレスに旅行で来ていて、コロン劇場でルッフォを聴き、大感激して出待ちしてルッフォのサインを貰った……ということでしょうか(笑)
 表の宛名に「マリア」とあったので、奥さんかな?
「今話題のルッフォだぞ~!!」なんて感じだったのかもしれません。

 余談ですが、この年のコロンでは初役が多いです。5月に《タイース》のアタナエル。また、8月には《エフゲニー・オネーギン》のオネーギンも初役で歌っています(何語で歌ったんだ?)! 
 ちなみにオネーギンはアルゼンチン初演だそう。

 こんな短期間に初役を4つも……! ちょっと、いや、かなり驚きです。

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